10年ほど前にブームが発生し、数多くの本が出版されたためドラッカーの名前をご存じの方も多いだろう。当時出版された本の中にはドラッカーの著作を剽窃して内容を集めただけのような本もあり、その節操の無さに辟易してしまうこともあった。また、内容をあまり理解していない編集者によるとみられる質の低い本もあった。
そんな中、読む本を選ぶのも大変なので、せっかく読むならできるだけピーター・ドラッカー氏自らによる本のほうが良いのではないだろうか。
『プロフェッショナルの条件』は読者が成果をあげ、自己実現していくことを目的としてピーター・ドラッカー氏によって書かれた本である。
知識が経済の中心になった
(中略)
つまるところ、成果を生み出すために、既存の知識をいかに有効に適用するかをするための知識がマネジメントである。
(中略)知識はイノベーションにも不可欠である。
マネジメントとは何か
多くの人にとって、マネジメントといえば企業経営を意味する。だがそれは、単にマネジメントが最初に現れたのが大企業だったからにすぎない。五〇年ほど前、マネジメントの研究に取り組んだとき、私も企業のマネジメントに焦点を当てていた。
しかしやがて、企業であれ企業以外であれ、あらゆる近代組織においてマネジメントの必要性が明らかになっていった。事実、われわれは、NPOであれ政府機関であれ、企業以外の組織においてこそ、マネジメントが一層必要とされることを知るに至った。それは、それらの組織が、まさに企業の基礎たる決算という規律を欠いているからである。
マネジメントが企業に限定されないことが最初に認識されたのはアメリカだった。今日、この認識は、あらゆる先進国において受け入れられている。今やわれわれは、マネジメントが、その組織の使命にかかわりなく、組織に備わるべき特有の機能であり機関であることを知っている。したがって、マネジメントは知識社会そのものにとって不可欠のものである。
どうだろうか。本書を読んだことにより、やはり巷にあふれるドラッカー本を読むよりピーター・ドラッカー氏の著作そのものを読んだほうが良いと再度認識するに至った。
また、本書はドラッカー氏の著作を何冊も翻訳しており、本人とも直接交流がある上田惇生氏が翻訳している。翻訳本にありがちな読みにくい日本語、読みにくい言い回しなどがなく、たいへん読みやすい。
おすすめ度★★★★☆
2020年8月読了
およそ10年ほど前に日本にドラッカーブームが起こるきっかけとなった本である。
一般の書店でも平積みにされて多く陳列されていた。