大衆を食いものにして、何の責任もとらず、富をむさぼる上流層。その手口は、政治・経済のルールを自分たちに都合よく作り上げ、それがすべての人々の利益になると大衆に信じこませるものだった。アメリカ、ヨーロッパ、そして日本で拡大しつつある「不平等」の仕組みを解き明かし、万人に報いる経済システムの構築を提言する。
著者のジョセフ・ユージン・スティグリッツ氏はアメリカの経済学者。ノーベル経済学賞受賞者であり、ジョン・メイナード・ケインズの影響を受けた人物である。
機会が平等でありさえすれば、結果が不平等となってしまっても構わないという意見を耳にすることは多い。私もある程度はそう思うが、スティグリッツ氏によると、アメリカにおいてさえもすでにそういう社会ではなくなってきているという。
アメリカとヨーロッパでは、表面上、中東より公平性が高く見える。良い大学を良い成績で卒業したものが良い仕事にありつく。何の問題もないように思えるこの制度は、実を言うと不正に操作されてきた。金持ちの親は自分の子供を、良い幼稚園、良い小中学校、良い高校に通わせることができる。そして、これらの学校に入ってしまえば、格段に高い確率でエリート大学へ進学できるのだ。(中略)
成金が三代で潰れるという神話は、トップを維持するためには血のにじむような努力が必要だと示唆する。本人もしくは子孫が精進を怠れば、みるみる下り坂を転げ落ちていく、と。しかし、1章で詳しく説明するとおり、これもほとんどが作り話だ。上流階級に生まれた子供たちは、転落せずにトップを維持する可能性が高い。
トリクルダウンという言葉をご存知だろうか。大企業や富裕層を支援する政策を採ることににより、まず大企業や富裕層が豊かになる。その富が低所得者層にもしたたり落ちることにより結局は国民全体が豊かになるという考え方である。この仮説をスティグリッツ氏は否定する。国民全体を豊かにするためには中流層~低所得者層を支援する政策をとる必要がありそうだ。
おすすめ度★★★☆☆
2020年7月読了
おすすめ度★★★☆☆
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