福岡市内初のとんこつラーメン店は、1940(昭和15)年ごろに中洲で開業した「三馬路(さんまろ)」だそうだ。その頃は中華そばと呼ばれ、しょうゆで味付けされた濁りの少ないスープに平打ち麺。現在の博多ラーメンとはスープも麺も異なった特徴を持つ。もちろんこの頃は博多ラーメンという名称は使われていない。
三馬路の味を伝授されて開業したのが五馬路(うまろ)。五馬路は後に屋号をうま馬へと変える。
ここまでうま馬さんのことを書いていると、とんこつラーメンの話なのになぜか馬ばかりが出てきて、不思議な気分になった。
そんなうま馬さんに久しぶりにお邪魔した。前回うま馬さんを訪ねてから5年以上は経過している。
しかもその時はラーメンを食べなかったので、実はうま馬さんのラーメンを食べるのは初めて。
こちらが昔ながらの源流博多ラーメン。一般的な博多ラーメンと比べて透明度が高い。とんこつを弱火でじっくり煮て出汁を取ったときの色加減。具材は非常にシンプル。前述のように麺は現在の博多ラーメンではあまり使われていない細い平打ち麺。独特の歯ごたえがあり、現在主流の博多ラーメンの細麺とは明らかに異なっている。
まさに博多ラーメンのルーツとも言えるラーメン。
予想外にとんこつの味がよく引き出されており、見た目以上のコクがある。嫌な匂いは全くないので、誰でも美味しく食べることができると思う。
こちらは濃まるラーメン。源流博多ラーメンの良さを引き継ぎながらも現代風の博多ラーメンの要素が加わっている。
出汁の味が強く白濁したスープ、歯ごたえが強い細麺、しっかりした塩気がありコクがある。それでいてマイルドで食べやすい。白ワインにもよく合う。うま馬さんはお酒の種類も豊富で居酒屋のような使い方もできるお店。ラーメンを食べながらお酒を飲むというスタイルにもぴったりのおいしさである。
うま馬さんの代表的焼き鳥メニューとも言える鶏皮の串焼きと博多の焼鳥屋さんでは定番のキャベツ。十分によく下処理されているのか、鶏皮は適度な歯ごたえと、柔らかさを兼ね備えている。タレは旨味たっぷりで美味すぎる。当然のことながらビールにも白ワインにもよく合う。
キャベツは新鮮で美味しく、鶏皮とビールをを楽しんだあとの舌をリセットしてくれる。
かくして、鶏皮→ビール・ワイン→キャベツ→鶏皮→ビール・ワイン→キャベツ→鶏皮⋯の無限ループが完成する。つまりキャベツのおかげで美味すぎる食べ物とお酒をずっと楽しむことができるのである。うま馬さんだけに、美味すぎるというよりこれはもはや馬すぎるとも言える状況。
ちなみに 焼鳥屋さんでキャベツを出すというスタイルは福岡県独特のものであり、他の都道府県ではあまり見かけない。しかし、福岡県内ではあまりに定着しすぎているためか全国的なスタイルだと思っている福岡県民の方も多い。
餃子といえば宇都宮や浜松を思い浮かべる方が多いと思うが、実は博多の餃子もなかなか美味い。博多の餃子の特徴は、なんと言ってもそのサイズにある。一般的な餃子と比べて一回り小さく一口サイズになっている。薬味として柚子胡椒が添えられることもあり、他の地域の餃子とは少し変わったスタイルと風味を楽しむことができる。また、餃子を鉄の鍋で提供するお店もある。
うま馬さんではそんな博多の一口餃子を楽しむことができる。
具が透き通って見えるほど薄い皮が、多めの油でカリッと焼き上げられている。このカリッとした皮の中にはジューシーな餡。香ばしさと旨味が共存し、ここでも餃子→ビール・ワイン→餃子⋯の無限ループが完成。
新旧の博多ラーメンを同時に楽しめるお店うま馬さん。うま馬さんのラーメン、鶏皮、餃子、ビールで博多を一層楽しめることは間違いない。
うま馬 冷泉店
〒812-0039 福岡県福岡市博多区冷泉町9−19