七草がゆとは、毎年1月7日の人日の節句に食される日本の伝統的な行事食である。春の七草を用いた塩味の粥で、新年の無病息災と豊作を願う意味合いが込められている。この風習は、平安時代には既に行われており、室町時代の汁物の原型ともされている。七草がゆの由来は、中国古典『荊楚歳時記』に記された正月七日に七種菜の羹を食べる風習に遡るとされる。日本においては、『御伽草子』七草草子にもその記述が見られ、辰の刻に七草粥を煮るとされるのは、かつて上辰日に行われていた風習の名残であるとされる。
七草がゆの具材として用いられる七草は、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロである。これらは春の七草と呼ばれ、新年の初めに摘み取られる。七草がゆは、正月の祝膳や祝酒で疲れた胃を休め、新年の健康を願うために食される。また、七草がゆを食べることで邪気を払い、一年の無病息災を祈るともされている。
七草がゆの説話には、唐の楚国に大しうという親孝行者がいたというものがある。彼は両親を若返らせるために山に入り、21日間もの苦行を行い、天上の帝釈天から秘術を授かる。その教えに従い、毎年春のはじめに七種の草を食べることで、両親は若返った。これが世に伝わり、七草がゆの風習となった。
現代では、七草がゆは家庭で作られることが多いが、スーパーや八百屋では七草セットが販売されることもあり、手軽に作ることができる。また、フリーズドライの七草やお茶漬け用のふりかけとして販売される例も見られる。COVID-19の流行により、自宅で過ごす人が増えたことから、七草茶漬けの需要が高まったともされている。
地方によっては、七草がゆの食材や調理法に差異が見られる。気候や降雪の関係で七草が摘めない地方では、七草を使用しない場合もある。また、調理法も白粥のみではなく、鰹節で出汁を取り醤油や味噌で味付けして雑炊にする地方や、和え物、お浸しで七草を食べる地方、汁物に加工する地方など、全国でバリエーションは豊富である。
このように、七草がゆは日本の伝統的な行事食であり、その由来や説話、地方による差異など、多くの面から日本の文化や歴史を垣間見ることができる。毎年1月7日に七草がゆを食べることで、新年の健康と無病息災を願う機会となっている。