以下は川内大綱引のすべてのルールや部隊・係などを網羅したものではありませんが、川内大綱引を楽しむに当たって知っていたほうが良いことを記載しています。ぜひご覧ください。
川内大綱引(せんだいおおつなひき)とは
川内大綱引(せんだいおおつなひき)は、鹿児島県薩摩川内市で毎年秋分の日の前夜に行われる伝統的な綱引である。西暦1600年頃に始まったとされ歴史も古い。国の重要無形民俗文化財であり、鹿児島県の民俗文化財。
薩摩の三大合戦行事として有名で『川内三大祭り』の一つでもある。
※2024年のように秋分の日に開催されることもある。
川内大綱引で使われる大綱は全長約365m、直径約40cm、重さ約7トンに達し、かなり大きい。しかもこの大綱は一回しか使われず、毎年新たに作られる。
戦いは上方(赤組)と下方(白組)の陣営に分かれて行われる。上方・下方の人数はそれぞれおよそ1500人だが人数制限はない。つまり、より多くの参加者を集めた陣営が有利となる。
川内大綱引の勝敗
綱引の終了時に綱の中心付近を自陣側に引き寄せていた方が勝ち。◯本勝負とか、◯回先取で勝利などといったルールはない。途中でどれだけ綱を引き寄せていたとしても勝敗には関係ない。
綱引が終わる明確な時間は決まっていないが、午後9時45分すぎに勝負が決まることが多い。その頃には綱の中心にのこぎりで切れ目が入れられて綱引は終了となる。
綱引の最中に自然に綱が切れてしまった場合は引き分けになる。
また、綱を引かれている側が「ワサをダン木に掛け損じた場合」はその時点で綱引は終了し相手方の勝利になる。
押し隊・引き隊・太鼓隊の役割
押し隊
押し隊は相手の陣地に攻め込み、相手の体勢を崩す部隊。
川内大綱引の最大の特徴は、その大きさもさることながら押し隊の存在だろう。押し隊は相手の陣地に押し入ることで相手の引き隊を大綱から引き離す。こうすると相手は綱を引きづらくなり自陣が有利となる。そうはさせまいと、相手の押し隊も押し入ってくるので大綱の中心付近では両陣営の押し隊による激しいぶつかり合いが起こる。この勇壮な攻防戦は川内大綱引の大きな見どころの一つ。
引き隊
引き隊は綱を引いて勝利を引き寄せる部隊。川内大綱引はもちろん綱引だ。綱を引かないことには勝利は得られない。当然のことながら引き隊の働きが極めて重要だ。引き隊は太鼓が鳴っている間中綱を引き続けるので、かなり体力を消耗する。そのため、引き隊の人数の多寡は相当勝敗に影響を与える。
太鼓隊
太鼓隊は太鼓を叩くことで綱を引く合図を発する部隊。大綱は自陣の方だけを見ても、180m くらいの長さがある。参加者の数も非常に多いので全体を見渡すことはできない。そのため、太鼓の合図は情報伝達に必須だ。多くの人でごった返している大綱引の現場では太鼓の音だけを頼りに何をすべきか判断しなければならないことも多い。
ワサ係・ワサ払い係の役割
ワサ係・ワサ払い係はワサに関する任務を負う係。
「ワサ」とは大綱の両端に作られた大きな輪のこと。これも他の綱引にはなかなか見られない川内大綱引に独特のものである。
相手方に綱を引かれてしまったとき、綱の勢いが凄まじく、人の力では動きを止められないことがある。そんな時には大綱引開催場所の中心付近に設置されている「ダン木」(杭のようなもの)にワサ係がワサを引っ掛けることで大綱の動きを止める。
ダン木を使って綱の動きを止めている間に、巻き返しのための作戦を練り、部隊の編成を整えて再び戦いをしかける。このため、ワサは勝敗において非常に重要な役割を果たす。また、戦いをしかける時間やタイミングはその時の状況や戦術などによって変わるので予測は難しい。例えば大綱引開始直後に綱を引かれてしまった側が直後にしかけてくることもあれば、ずっとワサをダン木に掛けたままにしておき、最後の最後でワサを外して一気に勝負を挑むこともある。
もし、ワサをダン木に掛け損じてしまったり、ワサがちぎれたりしたら負けとなってしまう。しかもワサの作成そのものがワサ係のメンバーに任されているので、ワサ係の役割は非常に重要だ。
綱が相手に引かれたことによって、ワサが勢いよく後ろから迫ってきた場合、ワサに巻き込まれたり、綱に引きずり込まれたりする可能性があり極めて危険である。また、ワサ係の邪魔になってはならない。後ろからワサが追いかけてきて、ワサ払い係の指示があったら速やかに大綱から離れなければならない。もちろん綱を離れるように指示されるまでは引き隊はギリギリまで綱を引き続ける。
四本取りの役割
四本取り(しほんどり)はその名前からは全く想像もつかない役割。大綱(本綱)に、綱を引きやすくするための細い綱(引き綱)を結びつける係である。
引き綱をつけると綱を引きやすくなり綱を引く力は大幅に上がる。しかし、地面との摩擦で引き綱はすぐに切れるので、ずっと使い続けることはできない。そのため、どのタイミングで何本引き綱をつけるかということが戦略上とても重要。また、引き綱を結びつける作業中には一時的に綱を引く力が弱まってしまう。このタイミングで敵に綱を引かれるとまずい。したがって指示があったらなるべく早く引き綱をつけなければならない。だからといって、あまりに多数の引き綱を同時につけようとすると、この隙を狙って相手に攻撃されることもあるので危険である。
まとめ
独特の綱、独特の部隊、独特のルールで行われる川内大綱引には、押し隊の激しい攻防、全力での綱の引きあいを通じた戦い、ワサをダン木に掛けるときの緊迫感など様々な見どころがある。
各部隊・係の役割について理解し、それぞれのかけひきに注目すると川内大綱引をよりいっそう楽しめるだろう。また、川内大綱引への理解を深めるために、事前に大綱引を舞台とした映画『大綱引の恋』をご覧になることをおすすめしたい。
【注意】
以上の記事は出典の表記やこの記事へのリンクの設置で、川内大綱引に対する肯定的な目的に使用する場合はどなたでも利用可能です。
ただし、川内大綱引に対する批判を目的とした利用は固くお断りします。
また、この記事は川内大綱引に関する一般の方向けの概要的な内容を記述しています。実際の詳細なルールや運用等については各関係者様等にてご確認ください。